片岡仁左衛門丈の休演に思うこと
先日、歌舞伎座「三月大歌舞伎」出演中の片岡仁左衛門丈が体調不良で休演というニュースが報じられました。
まあ、この方、若い頃からあまり丈夫な質ではありませんでしたが、それでも77歳の今日まで歌舞伎界(特に関西の歌舞伎)を引っ張って来られた大功労者であります。
ここ数年、歌舞伎界では長年トップを走ってこられた重鎮の訃報が相次いでいます。
昨年の暮れに、中村吉右衛門丈が亡くなったのは記憶に新しいところですが、関西の歌舞伎界においても、一昨年の坂田藤十郎丈、そして昨年は仁左衛門丈の兄である片岡秀太郎丈が遠行されました。
特に関西歌舞伎界は、東京に比べると歌舞伎俳優の絶対数が少ないだけに、こういう名の通った方が亡くなるのは、単に伝統の継承だけでなく、歌舞伎公演の興業面でも色々影響が大きいものです。
仁左衛門丈も77歳と、本来ならもう少し余裕を持って出演して頂きたいところですが、興業面から見ると昨年春に上演された「桜姫東文章」のチケットが即座に完売という人気振りからも、なかなか一線を引いて欲しくない存在であります。
もっとも、こうした大御所をフル稼働させなければいけない要因は、やはり10年近く前に相次いだ中堅クラスの人気俳優たちの他界と関係があるでしょう。
平成22年の暮れに人気絶頂の中村勘三郎丈が急死。
その喪も明けない年明け早々に、歌舞伎界の「総本家」とも言われる市川團十郎丈が遠行。
さらに翌年には、坂東三津五郎丈が遠行と、本来なら今頃歌舞伎界を引っ張っているはずの方々が、立て続けにこの世を去ってしまったことで、歌舞伎界は大御所と海老蔵丈、菊之助丈、勘九郎丈といった、やっと中堅になってきた世代とで牽引するという、非常に歪な構造になってしまったのです。
仁左衛門丈の容態については「そこまで深刻ではない」とのことですが、ここはゆっくりと養生をして頂きたいものです。