古典芸能の楽しみ方

「難しい」「敷居が高い」と言われる古典芸能も鑑賞するポイントが分かれば面白みも出てきます。そんな見どころなどをご紹介します。

やっぱり成田屋!

昨日、東京スカイツリーの開業10周年を記念して、市川海老蔵丈がスカイツリーの頂上で、市川宗家お家芸「にらみ」を披露したそうです。

www3.nhk.or.jp



「にらみ」とは左右の眼球を全く違う方向に向けて客席を見渡す仕草で、市川宗家こと「成田屋」だけが披露出来る芸とされています。
江戸時代には「にらみを見たら一年風邪を引かない」などと言われていたそうです。

昨今、歌舞伎以外のことで話題になりがちな海老蔵丈ですが、思えば彼の舞台を生で初めて観たのは、大阪松竹座で團菊祭が開催された時の「勧進帳」。
演じるのは当然ながら武蔵坊弁慶ですが、花道に登場した瞬間から圧倒的なオーラを放っていたのを、今でも鮮明に覚えています。

よく海老蔵丈の舞台を見て「大根だ」という人もいますが、それを言ったらお父様の十二代目 團十郎丈も人情物の芝居はそんなに得意とは言えませんでした。

そもそも「成田屋」の芸は、弁慶や「暫」の鎌倉権五郎など、わざとらしいくらいの存在感をアピールするヒーローを演じるのが本領。
ある意味、リアリティー溢れる演技は必ずしも要求されていないのです。

その辺りの歴史的な経緯を無視して、一概に批評するのは、私に言わせれば「野暮」というものです。

成田屋」に必要なもの、それは心の機微まで演じきる巧みな演技力ではなく、舞台を圧倒するオーラなのだと私は考えています。