「六月大歌舞伎」の演目変更に思うこと
片岡仁左衛門丈の休演が発表された歌舞伎座の「六月大歌舞伎」ですが、代わりに玉三郎丈主演の「ふるあめりかに袖は濡らさじ」の上演が決まったそうです。
元々、劇団新派で演じてこられたお芝居ですが、玉三郎丈もこの作品を気に入っているらしく、自ら新派公演に参加する形で、これまで何度となく上演してきました。
それが今回、歌舞伎公演として演じられることになったのですが、ここで歌舞伎ファンにとっては懐かしい二人の出演も発表されました。
かつて「市川月乃介」「市川春猿」の名で歌舞伎の世界で活躍されてきた喜多村緑郎丈と河合雪之丞丈が、久々に歌舞伎座の舞台に立つことになったそうです。
ともに「澤瀉屋」の役者として先代と当代の猿之助丈の歌舞伎を支えてきた二人ですが、2017年(平成29年)に後継者問題に悩んでいる劇団新派に移籍しました。
元々、玉三郎丈と同じく歌舞伎役者の頃から新派の公演に出演することも多かった二人なので、新派への移籍は特に大きな混乱もなく進んだようです。
とは言え、この時期の澤瀉屋は、長らく猿之助一門を支えてきた市川右近丈が「市川右團治」を襲名して「高嶋屋」に屋号が変わるなど、大きな動きが続きました。
決して表面には出ませんが、やはり四代目 猿之助の誕生以降、三代目時代をけん引してきた世代との間に、方向性の違いなどがあったのかもしれません。
(実際、右團治丈はこれ以降、猿之助丈との共演より、「高嶋屋」と関係の強い「成田屋」の海老蔵丈との共演の機会が増えています)
今回の新派俳優二人の出演は、もちろん玉三郎丈の強い引きがあったからでしょうが、歌舞伎役者としても十分に実力があった二人だけに、これっきりにならず、また機会があれば出演してほしいものです。