古典芸能の楽しみ方

「難しい」「敷居が高い」と言われる古典芸能も鑑賞するポイントが分かれば面白みも出てきます。そんな見どころなどをご紹介します。

訃報 坂東竹三郎丈 逝去

上方歌舞伎の「生き字引」とも言える大ベテランの坂東竹三郎丈が、亡くなられたとのニュースが流れました。

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こういう病気を患っていらっしゃったとは存じませんでしたし、来月の「関西・歌舞伎を愛する会 七月大歌舞伎」にもお名前を連ねていらっしゃったので、正直急なことに感じられてしまいます。

 

竹三郎丈の経歴は、様々な専門家や記事で紹介されるでしょうから、ここでは一々取り上げませんが、個人的には、毎年夏に国立文楽劇場で開催されていた自主公演「坂東竹三郎の会」のことが思い出されます。

2013年に傘寿の記念公演を最後に終えられた公演ですが、最後の公演では、片岡仁左衛門丈や市川猿之助丈ら、竹三郎丈を慕う大物俳優が客演で出演されて、大盛況の公演だったことを覚えています。

特に猿之助丈は「竹婆、竹婆」と慕っておられただけに、今回の訃報には享年89歳という年齢とは関係なく、落ち込んでいるかもしれません。

 

さて、上方歌舞伎に多大な功績を残された竹三郎丈ですが、実は「弟子に恵まれない」という一面がありました。

名の知られているところですと、現在、片岡愛之助丈の弟子として活躍中の片岡愛一朗丈ですが、元々は「坂東竹雪」という竹三郎丈の弟子だったことは、歌舞伎ファンなら大体知っている話です。

現在も女方として活躍されているのは、やはり竹三郎丈の下で稽古を積んだ賜物なんでしょうが、それが何故、愛之助丈の弟子になっているのか?

この辺りの経緯は、はっきりされることは無いですが、竹三郎丈の弟子を辞めた後、しばらく歌舞伎と距離を置いていたようです。

その後、縁あって愛之助丈の弟子となりますが、一度は歌舞伎をやめたものの、やはり歌舞伎を忘れられず、かと言って、竹三郎丈の元へノコノコ戻ることも出来なかったので、愛之助丈に拾ってもらったというのが実情のようです。

それでも愛一朗丈となってから、竹三郎丈と同じ舞台に度々立ってきたので、そこまで険悪な関係で弟子を辞めたわけではないようです。

 

問題は、現在、海老蔵丈の弟子となっている市川九團次丈でしょう。

この方、かつては竹三郎丈の若い頃の名前「坂東薪車」を頂き、弟子ではなく芸養子という、かなり優遇された扱いを受けていたのですが、2014年に突然、芸養子の関係を解消されるという事件が起きます。

この件も、あまり詳しく経緯が語られませんが、どうも竹三郎丈に無断で、様々な芸能活動を始めようとしたらしく、それを咎められたところ出奔してしまったようです。

結局、すったもんだの末に海老蔵丈の預かりとなり、2015年(平成27年)に、市川宗家が預かる名跡の一つ「市川九團次」を四代目として襲名することになります。

とは言え、この一件は歌舞伎界に結構、尾を引いたようで、今も海老蔵丈が出ている舞台以外では、客演でもほとんど出演がありません。

他の役者からすれば、市川宗家が預かったので、それ以上余計なことは言わない、ということなんでしょうが、共演するかどうかは話は別、なんでしょうね。

 

そして2018年には、坂東竹之助丈が少年にわいせつ行為をした容疑で逮捕されてしまいます。

よりにもよって、初めての自主公演の直前の逮捕で、どうなることやらと思いましたが、正直に容疑を認めていたことと、その後の自主公演が無事に開催されたので、あまり大ごとにならなかったようです。

とは言え、後ろ盾であった竹三郎丈を失って、竹之助丈の今後がどうなるのか、上方の音羽屋の行く末は、なんとも前途多難なまま、名優は旅立っていかれました。