古典芸能の楽しみ方

「難しい」「敷居が高い」と言われる古典芸能も鑑賞するポイントが分かれば面白みも出てきます。そんな見どころなどをご紹介します。

京都南座「三月花形歌舞伎」を終えて

今年も京都南座で、恒例となった感もある「三月花形歌舞伎」が開催され、先日13日に無事千穐楽を向かえました。


ここ数年、三月の南座は、東西の若手俳優主体の公演が続いており、歌舞伎座の本公演ではなかなか大役が回ってこない若手俳優にとっては、正月の「新春浅草歌舞伎」と並んで、貴重な体験の機会と言えるでしょう。

特に浅草の公演が、コロナ禍の影響で中止を余儀なくされているだけに、今回出演の若手俳優たちにとっては、自分の実力を披露出来ると力の入ったことと思います。


実のところ、私は今回の公演を見に行く機会に残念ながら恵まれなかったのですが、個人的には坂東巳之助丈に注目していました。

坂東巳之助丈は、2015年(平成27年)に惜しくも亡くなられた十代目 坂東三津五郎丈のご子息です。

幼い頃に両親が離婚するなどしたせいもあってか、多感な少年時代は「歌舞伎を離れる」ことも真剣に考えるなど困難な時期があったことは、本人もインタビューなどで披露していますので、ご存知の方も多いかと思います。

そんな巳之助丈に注目したのは、奇しくも父の三津五郎丈が他界した翌年の「三月花形歌舞伎」でした。

この公演で巳之助丈は、三津五郎丈も得意とされた躍りの演目「流星」を勤めたのですが、初演ということで少し固さが有りながらも、丁寧に踊りあげた様子に、すっかり感服したものでした。

歌舞伎の世界では、競馬のように血筋が重んじられる傾向があり、それを守旧的と見る意見も有るわけですが、巳之助丈を見る限りでは、踊り巧者と言われた父の三津五郎丈の子どもだけのことはあると納得の舞台でした。

その後も着実に経験を積んでいった巳之助丈。
今回の「三月花形歌舞伎」では、三津五郎丈が亡くなった月に演じた「芋堀長者」を勤めましたが、経験も重ねた今、おそらく見事に舞われたのだろうと思います。

今回は残念ながら見損ねましたが、いずれ衛星劇場などで放送されることもあるでしょうから、その機会を楽しみにしたいと思います。